読みが正しいからといって、読みどおり為替が動くということは、基本的にはありません。
とくに目先に関しては、さまざまな要因が複雑に絡み合い、ときには思惑や勘違いなども交えながらレートを形成していくので、はっきりと予測することは不可能であるといってよいでしょう。
しかも、2007年の年初来の円安は、キャリートレード、ユーロ高もあり、低金利の円を借りて高金利の外貨建て資産に投資する円キャリー取引もあるでしょうが、北朝鮮外交の行き詰まりが暗い影を投げかけて、1日に2円も円安になることがありました。
もっとも、このときは、すぐに戻しましたが、円安傾向に大きな変化はありませんでした。
世紀に入ってからの円安は、おそらく日本経済の実態、そのなかでもとくに財政赤字の悪化を反映したものでしょう。
実質実効為替レートが、プラザ合意以来の安さであるということは、日本経済のファンダメンタルズが、プラザ合意以来の悪さだということなのです。
A氏には、気の毒ですが、新聞などありふれた報道の解説をそのまま信じていては、為替取引で勝つことはできません。
だからといって、世界経済の動向を知り、為それらのことも含めて、私は翌日A氏に会って、次のようなことも付け加えて、説明しました。
ユーロが登場し、ドルの基軸通貨の座が揺らぎはじめているとはいうものの、ドルが圧倒的に強いことについては、しっかりと認識しておく必要があります。
日本のエコノミスト、経済評論家のなかにも、ドルの危ない面だけを強調する人がいた替の動向を読む必要はまったくないかというと、けっしてそうではありません。
世界経済の動きをしっかりと把握し、日本経済のこともよく理解し、為替の動きを、とくに中長期に、しっかりと読むことは、為替取引で勝利を得るためには必須のことがらです。
クリントンの経済政策、ブッシュの経済政策、いずれもよいところもあれば悪いところもあります。
それに、おもにどの面を評価するかでも、大きく変わってきます。
さらに、評価の時期によっても、違ってくるでしょう。
10年後、90年後となれば、もっとさまざまなことが明らかになっているはずなので、評価も変わるはずです。
そのことを念頭に入れて、いま私たちに必要なのは、バランスです。
過不足のないバランスのよい判断、実態にかぎりなく近い認識が、投資や為替取引をする私たちにとって、なによりも重要です。
いま世界中で、アメリカが嫌いな国はあっても、ドルを信頼しない国はありません。
どの国に行っても、ドルならば必ず受け取ってくれます。
しかも、ほとんどの国では、ドルで支払った方が喜ぶはずです。
円はどうかというと、ヘンな顔をしないで受け取ってくれる国のほうが少ないでしょう。
ユーロだって、そうです。
どの国でも、喜んでドルを受け取るのは、ドルに価値があるからです。
世界中の人が、円やユーロは知らなくても、ドルは知っているということです。
世界の基軸通貨というものであり、ドルにはその実力があるということです。
その実力のあるドルに、暴落の危険性があるというのは、残念ながらたしかです。
その原因は、貿易収支の赤字です。
アメリカの貿易赤字は、ここ妬年くらいずうっと続いていて、減る見通しがいまのところありません。
17年くらい、ずうっと貿易収支が赤字であるということは、17年ほどの間、ずうっとドルを世界にばらまき続けてきたということであり、大変なことです。
そんなことをしても、ドルが持ちこたえることができているのは、ドルはそれほどまでに強いということです。
ITバブルが弾けたあとも、『9.11』のあとも、ドルはクラッシュせずに、持ちこたえています。
ですから、ドルは確かに強いのですが、貿易赤字は解消されず、毎年積み上がっているということは、ドル暴落の危険性が増大し続けているということにほかなりません。
ドルのばらまき、垂れ流しが止まらないということは、ドル紙幣は世界の市場で増え続けているということにほかならず、市場は有限なので、論理的には、この状態がいつまでも続くわけはありません。
ただし、いつ、いかなるかたちで、終馬するかは、いまのところ誰にもわからないと言ってよいでしょう。
株式にせよ、為替にせよ、なにかのきっかけで暴落することが多く、暴落した後で、そのあたりが結局は限界だったということがわかります。
アメリカは、貿易収支で巨大な赤字を毎年積み上げ、ドル紙幣を刷り続けているにもかかわらず、大きくドル安にふれるということはありません。
ということは、行うべき調整を行っていないのだから、何かのきっかけで暴落するというのが、ドル暴落説の根拠なのですが、アメリカはそのことを十分にわかっていて、防ぐシステムをつくりあげ、その仕掛けを稼働させ、成功しているというのが現在の姿です。
ドル暴落を防ぐ仕掛けには、いくつかあると思いますが、一般的によく言われるのは、ドル回収システム設計です。
アメリカは、貿易赤字で世界中にドルを垂れ流したあと、「米国への投資」というかたちで、ドルをアメリカに還流させ、ドルを回収することに成功しているのです。
アラブとアメリカとの関係を見れば一目瞭然です。
サウジアラビァはアメリカに、莫大な量の石油を輸出して、ドルを受け取っています。
そのドルを、サウジアラビアはアメリカの銀行に預け、米国債を買い、株式投資を行っているので、実際にはドル紙幣は、ほとんど動いていないといってよいでしょう。
アメリカからの支払いも、サウジアラビアからの投資も、銀行間で行われるので、ドル札を動かす必要はないわけです。
イラク戦争が始まり、やがて泥沼化しましたが、ドルはびくともしていません。
そのことには、アメリカの軍事力、穀物輸出力、強いアメリカ企業、インターネット普及による情報収集力に、金(ゴールド)の保有量などもあると思われます。
さえも輸入米に勝てそうもないので、相当な関税をかけているというありさまです。
智恵や技術があったのはひと昔前のことで、なくなっているとはいえませんが、最近は減ってきていると言わざるを得ません。
熟練度は年々落ちてきていて、生産拠点の海外シフトが進み、ごく一部のハイテク部門が残っているだけです。
アメリカの人口は、日本の約2倍ですが、日本は少子化に歯止めがかからない状態なので、今後はもっと差がついていくに違いありません。
ちなみに、アメリカでも出生率も落ちていますが、日本ほどではないので、日本のような極端な少子高齢化社会にはならないでしょう。
人口が減るということは、労働力が減るということであり、国民総生産高から国力にまで大きな影響を及ぼす事態です。
下請け業者はあいかわらず厳しい競争をしているようですが、発注元である大企業が怠惰になっていて、たとえばテレビ番組なども下請けから、孫請けの制作プロダクションだけが制作に関わり、管理がずさんなことから、やらせや虚偽の放映がその後のニュースになることもあります。
アメリカでは、90年代初頭に産業構造のリストラとリエンジニァリングを終了し、ビック・ビジネスとベンチャーが、上手に棲み分けています。
ところが、日本では、よいベンチャーがなかなか誕生せず、成長もしないで、大企業が社内事業部で、ベンチャーのようなことをすることが多く見受けられます。
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